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宮沢賢治展:セロ弾きのゴーシュ。


日本橋三越で開催中の、「絵で読む 宮沢賢治展」に行ってきました。

賢治の手書きの原稿をたくさん目にすることができて、思うところ多いのだけれど、とても驚いたのが、セロ弾きのゴーシュの猫の台詞。

現在出版されているすべての本で、猫は、ゴーシュにこう言う。

「それより、シューマンのトロメライを弾いてごらんなさい。きいてあげますから」

どうして猫は、こんなになまいきな口をきくんだろう、と思ったことはあるけれど、それほど気にしてはいなかった。

 それが、今日、賢治の原稿を見ると、こう書いてあった。

「それより、シューベルトのアヴェ・マリアを弾いてごらんなさい。いい気持ちになりますから」

 シューベルトのアヴェ・マリア!
 全然違う曲・・・。
 違いすぎる。
 しかも、シューベルトに縦線が入っていて、その右に、「グノーの」と書き直されていた。

 グノーのアヴェ・マリア。

 ところが、さらに、グノーとアヴェ・マリアを縦線で消して、「シューマンのトロメライ」と、書き直してあった。

さらに「きいてあげますから」。

 シューベルトのアヴェ・マリアが、シューマンのトロメライに変わり、イメージは、とろりと猫っぽくなった。
 さらに、「いい気持ちになりますから」が消えて、「きいてあげますから」に変わり、猫はいかにも生意気になった。

やがて、ゴーシュの弾く「インドの虎狩り」に、猫が火花を放って逃げ出す時に、
「これから、もう先生のタクトなんかとりませんから」
「だまれ、これから虎をつかまえるところだ」

と、展開するのだけれど、元は、

「これからもう、先生のチーズなんかとりません」
「チーズを食ったのは、おまえか、さあ、踊れ踊れ」

 だった。

 そうだったのか。
 この猫は、ゴーシュの台所から、チーズを盗んで食っていたのだ・・。

 いずれにしても、セロ弾きのゴーシュの冒頭、
「ゴーシュは、町の活動写真館でセロを弾く係でした」

 から始まるのは、ずいぶん唐突だなあと思っていたけれど、賢治が最初に書いた、書き出しは、

「セロ弾きのゴーシュは、川端の壊れた水車小屋に一人で住んでいました」だった。

 何度も書き直された原稿をいくつも目の当たりにして、私は、今日、本物の宮沢賢治に会ってきたような気がしている。



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テーマ : 児童文学・童話・絵本 - ジャンル : 小説・文学

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